2012年12月24日月曜日

~第三回近畿写真学科~ ディベロッピング展報告書

皆様

~第三回近畿写真学科~
ディベロッピング展の報告書が漸く完成致しました。
大変遅くなってしまい申し訳ございません。

pdfファイルにてお送り致しますので、ご利用の方は以下アドレスまでご連絡下さい。


developing.exhibition@gmail.com
担当: 玉置

2012年12月17日月曜日

第三回ディベロッピング展 会場風景

皆様、大変ご無沙汰しております。
blogの更新が出来ずで、本当に申し訳ありませんでした。

大変遅くなりましたが、
7月31日(火)~8月5日(日) 海岸通ギャラリーCASOで行われました、
第三回ディベロッピング展の会場風景写真を、ご紹介させていただきます。









































たくさんのご来場、ありがとうございました。



画像データは一部、下記HPから引用させていただきました。
海岸通ギャラリ−CASO様 HPwww.caso-gallery.jp


ご協力、ありがとうございました。



2013年、更なる飛躍を遂げるであろうディベロッピング展に向けて、私たちは徐々に動き始めています。
今後とも少しずつではありますが、
blogやFacebook等で情報を載せていきますので、チェックしていただけると幸いです。


最後になりましたが、
今回から新しく広報担当となりました川元と申します。
まだまだわからないことだらけですが、どうぞよろしくお願いいたします。


ディベロッピング 広報  川元みなみ

ゲスト作家 藤安淳 × 企画 玉置慎輔 によるトークイベント 



展示期間中、8月4日(日)17:00〜行われた
ゲスト作家 藤安淳×企画運営 玉置慎輔によるトークショーの内容をblogでも一挙に公開します!

ユーストリームでも配信されていますので、そちらもよろしければどうぞ!

▶ ユーストリーム配信 http://www.ustream.tv/channel/developing-phot-2012


協力 パラボラ舎 様 http://www.para-base.net/index.html




近畿写真学科ディベロッピング展2012 トークショー
( ゲスト:藤安 淳 聞き手:ディベロッピング展 企画運営 玉置慎輔 )



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藤安淳(ふじやす じゅん)

1981年、東京都生まれ。現在、大阪在住の写真家。
2005年、同志社大学経済学部卒業。2007年、写真表現大学修了。

双子の弟と自信を写真に撮った「DZ」で、2008年の第一回塩釜フォトフェスティバル・大賞を受賞。
関西を拠点に人の関係性を見つめるような、落ち着いたトーンのポートレート作品を作る。
今回はゲスト作家として、
今年3月にThe Third Gallery Aya(大阪市)にて発表した新作「empathize」を展示。


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玉置:
こんばんは、ディベロッピング展の企画をしています、大阪芸術大学写真学科卒業生の玉置です。今回のトークでは写真表現大学を卒業後、第一回塩釜フォトフェスティバルで大賞を受賞した藤安淳さんをゲストにお迎えしています。

藤安:
よろしくお願いします。

玉置:
まず質問なんですが、藤安さんは一般の4年制大学を卒業されていますが、写真表現大学に入学されたのは、在学中、卒業後、どちらですか?

藤安:
僕は、みなさんと違って遅くて4年制大学卒業後です。芸大や専門学校に通ってる方には参考にならないかもしれないんですが、写真自体にめざめたのは、大学2年生くらいのときだったんですね。それまで、写真の「写」の字も考えていなかったんですが、その当時、自分がなんのために生まれてきて、何をすべきで、これから、どう生きていくのか、考えている時でした。写真という道具を使えば、そういった自分の悩みみたいなものに答えがでるかな、と思って始めたのがキッカケです。

玉置:
ちなみに学費などはどうされたんですか?

藤安:
学費についてなんですが、当時通っていた大学が、特別に行きたい大学・学部では無かったので、転部を考えていて、それなら美大に行きたい、と思って3年生から編入学できないか、と思って準備をしていました。それで、親に今の大学を辞めて美大に入学させてくれ、と言ったんですが、一般大学は卒業してくれ、と言われて(苦笑)。
僕も突拍子もないことを言うほうなので(笑)なるほど、と納得して、残り2年間我慢して、それでも写真がやりたければ、学校に入ろう。もし飽きれば普通に就職しようと決めました。結局2年間飽きずに写真をやって、大学4年生のときはほとんど学校に行かずにアルバイトをして、学費を貯めていきました。

玉置:
入学してみて、それまでと変わった部分はどんなところでしたか?

藤安:
まずは、大学の図書館で山ほど写真集やDVDが見れる、ということでしたね。

玉置:
ちなみに、沢山あった写真集や映像の中でどなたのものをよく選んでいましたか?

藤安:
写真表現大学に入った頃は、まだ何も分かっていなかったので、片っ端から見てみよう、という感じでした。写真表現大学には、それまで学内で開かれた第一線で活躍する写真家の方の授業が映像で残っていて、中でも一番感銘をうけたのが畠山直哉さんでした。
というのも、作家さんの話は、精神論や感情論にながれてしまうことが多いんですが、畠山さんは理論的な考え方や、思考を積み上げていくところが魅力的に思えました。

玉置:
なぜコレを撮るのか、を突き詰めるアプローチの仕方は藤安さんの作品への影響がありそうですね。藤安さんは塩釜フォトフェスティバルの大賞を受賞されて、写真表現大学で展示とトークをされたそうですが、その時はどんな話を?

藤安:
受賞について、と副賞で制作した写真集にまつわる話が主でしたね。

玉置:
ちなみに、受賞の経緯について教えていただけますか?その時は卒業されて…

藤安:
そうです、卒業後ですね。

玉置:
写真集を作るってなかなか若くしてできないと思うんですが、どんなエピソードがありましたか?

藤安:
写真集を作る、っていうのはホントは大変なことなんですが、僕の場合は賞を頂いて作って頂いてる、という身分なもので(笑)結構制約もありました。希望はもちろん聞いてもらえるんですけど、ちょっと遠慮してしまったり。中島英樹さんという「cut」という雑誌などもやられていたアートディレクターの方と、相談していたんですが、ちょっと僕が生意気を言ってしまって(苦笑)怒らせてしまったり。写真集を作る際に、色味の校正で印刷会社に行ったり、いろいろな経験ができましたね。

玉置:
それでは、作品を見ながら。まずは「DZ」ですが、今、表示しているのは写真集とは違うものなんですね。

藤安: 作品自体は、54枚の写真が対になったもので、100枚近い写真があるんですが、塩釜フォトフェスティバルの副賞に写真集を作るというのと「PHOTOGRAPHICA」という雑誌に6ページ特集掲載される、というものがあって、その紙面ですね。双子の弟と、自分を撮った作品で、マクロレンズを使って、モノクロで撮影しました。レビュアーの方の講評も紙面に掲載されました。

玉置:
いつも気になるんですが、下にある陰毛が他のものに見えるんです。

藤安:
そうなんですよね。「DZ」はジャンルでいうとヌード作品になるけれど、ヌードっぽくない、と言われますし、さきほどの陰毛の写真も風景写真みたいに見える、って言われますしね。自分たちの「輪郭」をなぞるというか、シェイプにこだわった結果、そう見える作品に仕上がったんだと思います。

玉置:
「DZ」のコンセプトというのは?

藤安:
お腹の中からずっと横 にいる弟の存在を撮る、まず、それを撮らないと自分にとっての写真が始まらないんじゃないか、と思っていて、弟との関係性を撮ろうとはじめました。それがたまたま僕らは双子だった。
だから、双子の写真家、といわれることには抵抗がありましたね。
この作品を作った時に「身体的な特徴」「精神的な特徴」か、どんな切り口でアプローチするのか、試行錯誤していました。その中で、精神的な特徴や比喩は伝わりずらいだろう、と判断して「DZ」では身体的なアプローチをしていきました。シェイプに意識を寄せてもらえるよう、極力情報量を抑えようと、カラーではなくて、モノクロにしました。

玉置:
そのあとの作品は「34」というお父さんを撮った作品ですが、どういったアプローチをされたんですか?

藤安:
「DZ」の後に、何をしようか、と考えて新作が一年くらい進まない時期があって、その時に父が大病をしたんです。そもそも自分のコンセプトが、他者との関係性を撮っているので、いままで「ふつう」にいたお父さんという存在が、もしかすると、いなくなるかもしれない。そんな不安なとき、身近にいる人ほど意識が薄くて、分かってるようで分からないことが多いんじゃないか、と思ったのがキッカケです。そのあたりは「DZ」と近いですね。
ちょっと違うのは、「DZ」のときは、同時性にこだわっていて、弟の写真を撮る時に、自分の写真を撮る、というように「時間を共有する」ということにこだわっていたんですが、お父さんの時は撮影した時期が違っていて、実は僕の写真は「DZ」で撮ったものなんです。
「34」というのは僕が生まれた時のお父さんの年齢で、自分とお父さんには「時間」の隔たりがあって、それは相対的には、繋がってきているけど、絶対に僕が知り得ない時間がある。それが蓄積された身体を撮りたかったんです。

玉置:
「34」までは身内の方を撮られた作品ですが、今回展示している作品「empathize」は他の双子の方ですよね、そのあたりの変化というのは?

藤安:
「34」を撮って2〜3ヶ月、次は何を撮ろうか、とカメラを持たずに考えていて、原点に戻ろう、と。 自分の原点が何か、と考えたら「人との関係性」と「双子」というところなのかな、と思って。よく「双子ってどんな感じ?」って聞かれるんです。だけど、自分にとっては、双子という状態は普通なのでうまく言葉に出来ない。
双子の弟と、自分が間違われて、知らない人にハイタッチを求められたり、自分がいなかった場所に「あの日いたよね」って言われたりするんです(笑)その時に、自分と似たような存在が、知らないうちに「自分」として認識されていることがちょっと怖いな、と思うことがあって、でもそれは双子の人しか共感しずらいですよね。それが最初のキッカケです。

玉置:
他の双子の方と自分を重ねてみる、というような感覚でしょうか?

藤安:
「empathize」という言葉の意味自体は「共感する」という意味なんですが、要は自分が双子で、撮影する人も双子で、そのことをどういう風に思っているのか、を感じに行くようなものなんです。今回展示しているのは写真だけなんですが、インタビューもしているんです。だから、文字も作品の一部でそれも出せるでしょうし、表現方法も変わる作品だと思っています。

玉置:
今後、年齢や国ごとに分かれた展示も考えられますか?

藤安:
大きな枠としては、他の双子の方がどう感じているか、に着目しているので、老若男女、国籍問わず、例えば、イタリアの双子、おばあちゃんの双子、と幅が広がるほど面白くなる作品だとは思います。今はまだ作品点数が少ないので、双子を撮っているだけ、というような見え方もしてしまうし、顔だけ、など見せ方もまだまだ変わるだろうと。

玉置:
今回展示を見て思ったのが、双子を通して、その先に見たいものがあるんじゃないか、と。まだ僕はそれに気づいてないんですが。それから、展示の中に、お一人で写っているものもありますよね。あえて余白を作るのは展示空間も含め、どういう意図なんですか?

藤安:
今は、同世代の方を撮ることが多いんですけど、年配の方だと、双子でもお一人が亡くなっていたり、遠く離れて住んでいたり、その方のエピソードが浮き出てくる気がするんです。
最初の切り口こそ、僕にとって身近な「双子」でしたが、今後は「双子」を通して、人と人の関係性を見つめる作品づくりをしていきたいんですね。写真はやっぱり視覚の表現だし見た目の印象、というものにはこだわりたい。ですし。「empathize」については、今後、撮影した人が年を重ねていく過程も含めて追って行きたいんです。

玉置:
なるほど。話が戻るんですが、「DZ」で受賞して変わったことはなんですか?

藤安:
考え方とかはあまり変わらなかったですね。一番変わったのは「写真家です。」とちゃんと言えるようになったことと写真の知り合いが増えたことかな。でも、賞をとるのがいいとは限らないと思いますよ。

玉置:
どうしてですか?

藤安:
僕は写真家としてやっていく中で大事なのは「どういうモチベーションで、どんな方向に行くのか」を自分で見て、そこに向けて進んでいくことだと思うんです。
賞は、やっていることに少し自信がついて、認めてもらえたと、いうくらいでいい。
学生時代は賞をとろうと意識するより、時間もあるし、思ったことはなんでも試すほうがいいと思うんですよ。それで卒業するときに、こんなことができた、あんなことができた、という経験がどれだけできたか、が大学に行く意味だと思うんです。
だから、自分が作りたい作品を作ったらいいんですよ。

玉置:
藤安さんはこれからの写真はどうなっていくと思われますか?

藤安:
写真には4つの要素があると思ってるんです。シャッターチャンスを逃さない「ハンター」の要素と、現像など物質をコントロールする「科学者」の要素と、撮ったものを作品に仕上げていく「職人」としての要素、最終的に見てもらうようにとどける「デザイナー・編集者」としての要素が必要だと思うんです。70年代・80年代から活躍している、荒木経惟さん、森山大道さんといった写真家の方は一瞬を逃さない、ハンター的な要素が強い。
今はデジカメが出てきて、ボタンを押せば写真が撮れるし「写真を撮る」ということはそれほど難しいことでは無くなっていますよね。これからは、どう見せるか、という編集者的な目線が重要なんじゃないか、と思っています。
デジタルかフィルムか、というところに関しても、僕はそれほどこだわってはいないんですけどね。

玉置:
今回の作品はどちらですか?

藤安:
フィルムです。2つの違いっていうのは、実体があるものか、データか、と言うところですが、作品を作るときに、人に会って、僕もその人と関係性を築くのに、今回はフィルムで撮るほうが信じられる、という感覚だったんです。会場の学生さんは生まれた時から身の回りがデジタル写真ですよね。
僕の世代、特に写真をはじめたころがちょうどデジタルへの移行期だったし、デジタルハイブリッドって言ってるんですけど、その作品ごとに必要な道具を使う、という風にシンプルに考えています。
ただ、デジタル全盛の中、自分にとって一番大事なものは何か、と考えたら身体性だと思っているので、そこには回帰するつもりです。実体がないものが多い時代だからこそ、かもしれません。



(対談おわり)



このあと、会場の中で藤安さんが気になった作品ピックアップのコーナーでは、
モノクロで花と女性の顔で構成された井上香奈さん(日本写真映像専門学校)の作品(上)、風船がモチーフで、浮遊感のあるスナップの片岡恵理子さん(ヴィジュアルアーツ専門学校)の作品(真ん中)、別の人の表情を重ねた顔をポップな色調で作った村上 真実(日本写真映像専門学校)さんの作品(下)が取り上げられました。









そして最後に、司会の玉置が出展していた「現像される」写真というメディアと言語との関係性に着目した作品について本人が語り、今回のトークショーを締めくくりました。


第三回ディベロッピング展 トークイベント 2012.8/4(土)17:00-1800